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輸入文化も100年立てば土着になる。甲州ワインの今昔

vol16

『発酵文化人類学』の出版記念企画として、雑誌ソトコトの連載バックナンバーを無料公開!  なぜそんなことをするかというと、書籍版は過去の連載記事を全部無視した「完全書きおろしREMIX」だからなのだ!

▶輸入文化も100年立てば土着になる。甲州ワインの今昔 | ソトコト2016年6月号掲載 

僕の住む山梨県甲州市には、150年続くワインの文化があります。

引っ越した当初、フツーのおじちゃんがステテコ姿でナイター見ながら、湯のみについだワインを飲んでいたのを見て仰天してものでした。しかも酒の肴はマグロのぶつ切り!
今回はその土着化しすぎた不思議な洋酒文化を皆さまに紹介するじゃんね(←甲州弁)。

みんな大好き!な超絶コスパワイン

甲州ワインの歴史が始まったのは明治初期の頃。フランスで修行を積んだ高野正誠と土屋竜憲という二人の青年が日本ではじめてのワイン醸造をスタート。当初は専用の設備が無かったので日本酒用の樽で仕込み、一升瓶に詰めていました。今でもスーパーや酒屋さんに行くと一升瓶ワインを目にすることができる(しかも旨安チリワインもビックリの超絶コスパ)。

甲州市をはじめとする山梨中央部では、老若男女ほんとに地元のワインが大好き。僕も山梨に来てから海外のワインをほとんど飲まなくなりました。
なんでそんなローカルなワイン愛が育ったのか。そこにはちゃんと理由があったのだな。

ローカル最適進化の個性派

「ガラパゴス進化」。

これが甲州ワインの特色だと断言してしまおう。まずブドウの種類。ワインは普通ワイン用ブドウを使って醸造するのだが、甲州ワインは「甲州」という昔からこの地に根付いている食用

ブドウがスタンダード。他にも「ベリーA」とか「ブラッククイーン」とか「アジロン」とか輸入ワインではさっぱり見かけないブドウが使われている。

ワインの原料は、ブドウだけ(水も使わない)。なので、ブドウの違いは味の違いに直結する。
甲州ワインの味の特徴は「軽くて」「丸くて」「ミネラルっぽい」。赤ワインであっても何年も熟成させたりしないで、フレッシュなうちに飲む。まるでジュースを飲んでいるような喉越しの良さと人懐っこさがある(どっしり重いヤツもあるにはあるが)。

インは食中酒なので、お酒単体ではなく、食卓とのマリアージュが大切なわけですが、甲州ワインはどんな食事とマリるかというと「山梨の郷土食」とマリっちまうわけさ。マリ!

日本的テロワールの真髄

ここ数年、国際的な評価も急上昇中の甲州ワイン。
その秘密は「ヨーロッパを真似しない」というスタンスにありました。ローカルな老若男女のためのテーブルワインならば、みんながフツーに食べているものにフィットするものでなければいけない。

意外に保守的な山梨県民、外食以外でイタリアンやフレンチを嗜むわけでもないので、ほうとうにも煮物にも合うほっこりテイストを目指すのは必然。遠くのワインマニアよりも、とにかくご近所さんを喜ばすために工夫を重ねたら、いつの間にやら本場フランスやイタリアからも注目される個性派ワインになってしまったのだな。

最後に小話を一つ。友人のワイン醸造家の若尾くんに「和食に合うワインって、どんなイメージで作ってるの?」と聞いたらば「うーんと…焼き鳥の塩が白ワインで、タレが赤ワインかなあ」という驚きの返答が。

わかりますか?これが日本的テロワールってヤツなのよ。

【追記】ワイン醸造は、原始的であると同時に奥深い発酵技術。ブドウ汁の糖分に酵母が繁殖してアルコールや有機酸を生成していくわけですが、ブドウの品種や発酵期間によって笑えるぐらい味が変わります。要素が少ないぶんだけ、ブドウの出来で味が決まるので「ワイン醸造=ほぼ農業」と言える。


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