▶デザインを掘り下げる

記憶の取っ手

年度末のドタバタ、今日も工作室で鋭意工作中のヒラクです。

さてさて。

僕は、絵や映像、ことばなどを使いながら情報の「イメージ」をつくる、ということを生業をしているのですが、これって要は「記憶の取っ手をつける」という技術なのだなあと最近つくづく思います。
情報が入った箱を、ひょいと持ち運べるような素敵な取っ手。そんなものをいつもつくろうと四苦八苦しているのです。
具体的に説明すると、こんな感じです。

ここにおいしいお米があります。これが情報の元素です。で、次にこのおいしいお米をみんなに食べてもらうために、1.おいしいお米です。2.完全有機無農薬です。3.イケてる農家さんがつくってます…と、情報を交通整理して情報の「ちょうどよい箱」をつくる。
ほとんどの場合、ここでだいたい「これでよし」としてしまうんですが、いくら素敵な箱であっても、もしそれがただの箱であれば、持ち運びしにくい(段ボール箱なんかを考えてみてください。底から丸ごと抱えたりしてしんどいですよね)。

で、ここから先のプロセス「取っ手をつける」がとっても大事になってくるわけです。

しかし。「箱にしまう」は比較的ノウハウ化しやすい技術なのですが、「取っ手をつける」のはノウハウがなく、定石もなく、王道も邪道もない、というか全てが邪道という、なんともいいようが無い技術なのです。

▼素敵なネーミング
▼殺し文句のキャッチコピー
▼思わず振り向く斬新なイメージ
▼「なぜ?」と驚く不可思議なシチュエーション
▼頭のなかで無限リフレインする音や声

…わかりやすくいうとこれらが「取っ手をつける」作業にあたります。
一見矛盾しているようですが、きれに整理された箱には「!」や「?」でできた取っ手がくっつくのです。
こいつがなかなか難しいんですねえ。

さて、これを「どうつくるか」は、僕としても必殺技はありませんし、恐らく先人達が偉大な業績を残しているのでそれを参照して頂くとして。

僕は実はこの不可思議だったり毒があったりする「取っ手」がキーになってくる現象を面白く思うんですね。
問題を抱える組織や自治体の話を聞くと、たいがい「取っ手がほしい」って言うんですね。自分たちのイケている部分をアピールできる「!」や「?」が欲しいと。で、この「取っ手」を手に入れるにはリスクがかかってくるんですよ。すなわち、「キレイごとから逸脱する」というリスクが。

色々と良さげなことを語る割には、別に進んで話を聞きたくないなっていう人がいるんですが、それはまさに「取っ手の欠如」状態に他ならないわけです。分析して、整理してわかった「ことわり」を惜しげも無く捨ててもう一度不可思議の海に飛び込んで行くバカさなり勇気なりが問題解決のためのステップなのです、が。時代はなぜかひたすらとっかかりのないツルッとした「キレイごと」を追い求めることに熱心だったりするわけで。

この現象をもう少し追ってみると、こんな感じなのかなと思うのです。
「記憶されること」を第一義とするか、「褒められる(怒られない)こと」を第一義とするのか。
ここに運命の分かれ目があるように思います。

人の認知や注意には矛盾したダイナミズムがあります。ラブ&ピースとか言いながら、海外セレブのしょうもないゴシップを追いかけてしまったり、他のラブ&ピースを口にする人に会うとイラッとしたり。
「そういうのは良くない」とかいって、そのメカニズムを無かったことにしたり克服しようとすると、ますます「キレイごと化」が促進されていってしまうので、まずは自分の矛盾した認知のメカニズムや心の動きを注視してみるといいのかなと最近よく考えたりしています。

たかが取っ手、されど取っ手。そこに運命の分かれ道があると思うのです。
それでは良い週末を。

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