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規模のマネージメント

成長することが絶対の正解ではないけれども、成長を否定することも不自然。
これって結構悩ましい問題です。
僕の仕事の領域はデザインなので、企業だったら売上げや顧客数、例えば自治体だったら何かの活動に対する参加者数やその他何かの単位で必ず「どう成長するのか」というライフプランを最初に聞くようにします。「どこまで成長したいですか」と。それって要は「規模感の設定」です。
僕はこの「規模」というヤツは、単なる数値を超えて本質的なものではないかと思うんですね。
原則として企業は無限に成長していくことが前提になっています。行政で建てるプランも、何かが無限に増えていくことが前提であることがほとんど。これって、当たり前のように見えて、おかしなことだと思いません?
日本の人口は去年?今年から減少に転じているし、一方高齢化が進んでいる。僕たちの世代はモノを買ったり何かサービスを受けたりすることに積極的じゃなかったりする。
(海外で売ればいいじゃないかなんて話も最もですが、それも今や怪しい雲行きです)
つまり、パイは限られている。全体でみれば、減ることはあっても増えることはない(部分でみればパイが増えているところもありますが)。ということは、無限の成長なんて無理じゃないですか。現状維持できれば御の字です。心ある経営者や行政マンであれば、「利益を追いかけることに意味はない」、「別の幸せの尺度を持ったら良い」と思っているし、それももっともです。
…なのですが。
やっぱり「成長」って必要なんだよ、って僕は思うんですよね。
植物を見てみると、水と土と太陽が適切にあれば、毎日成長していきます。草花だったら1シーズンで枯れてしまいますが、多年生植物だったら、成長を何十年も続けます。そこに「オレ、成長していいのかな?」という戸惑いは見られません(ちゃんと聞いたことないからわからないけど)。季節が変わって日の傾きがかわったら、葉や枝の位置を変えて、成長しようとする。その姿勢たるや、「オレは育つために生まれてきた」と言わんばかりです。
思うに、「成長する」ということは、「生きるということの意義がみなぎっている」という状態ではないでしょうか。
何かに対して集中している、意義を感じている、喜びがある、というグルーブ感が「成長」という現象によってアウトプットされているのです。
けれども。
話を一つ戻しますが、「成長」自体を目的とすることはなんだかおかしい。それも現実です。
「なんかよくわかんないけど、とにかくデカくなりたいんすよ」みたいな態度は、しっくり来ないわけです。
そこで必要になってくるのが「規模」のマネージメントです。
それはつまり常に実現可能な「成長」を設定することで、モチベーションを引き出し続ける、ということです。「成長」の本質的に良い部分だけを常に取捨選択していく。
具体的に考えてみましょう。
庭でとれるあんずでジャムをつくったとします。これが予想以上に美味しすぎて、近所の人たちが競って分けてもらおうとする。それが嬉しくて、もっと多くの人にその美味しさを伝えたいと思います。そのうちに「商品として売ろうか」という流れになります。
その時に「規模」のマネージメントが必要になるはずです。「月100個」であれば、庭で取れる量で充分です。「月500個」であれば、近所のあんずを育てている人から原料を分けてもらうということになる。「月1000個」であれば、近所の人を束ねる必要があるかもしれません。「月5000個」だったらどこか遠い知らない場所からあんずを仕入れる、ということになっていくでしょう。
さて、ここで4つの「成長の規模」が設定されました。
この中で選ぶべきは、「自分がワクワクできる」ものであるのがよろしいかと思います。月100個では今と同じだから飽きてしまう。月500個だと、本家のおじちゃんとやればできるからもうちょっと冒険したい。月5000個だとこの自慢の味を再現できる気がしない。じゃあ「月1000個」ならどうか。
と、その「規模感」を設定した瞬間、素晴らしい構想とモチベーションが生まれるかもしれません。近所の人たちと「あんずの会」を作って、月に一回会合を開いて、将来は自分の村を「あんずの里」にしたらどうだ?それで海外にパティシエの留学に出た娘を呼び戻してあんずカフェでも作って…
というビジョンが現れたとき、突如その人の潜在力が開花しまくり、100人力の勢いで美味しいジャムを作りまくるかもしれません。
さて、これが先ほどお話した「規模」のマネージメントです。「成長」を漠然とした概念から、自分の力を引き出す具体的な起爆剤に変えるのです。変な例えですが、マッサージしてもらってる時に「あ、そこそこ」ってなる「急所」があるじゃないですか。自分の目標を叶えるための無数の可能性のなかから「あ、そこそこ」的なポイントを見つける。こいうつが肝要でないかと思うわけです。成長って、成功したいからあるんじゃないんですよ。自分の人生に意義を見つけるためにあるんです。
何かを始めるときに意識してみて下さい。どれぐらい「成長」したいですか?
*本文の主旨とは離れてしまうので小さな文字で補足します。僕がこの「規模」のマネージメントを意識するきっかけは「リスクマネージメント」のためでした。つまり、どこまで達成したら成功で、仕事の報酬に値するか線を引いて仕事を始める必要がありました。この「規模」をあいまいにして始めてしまうと、実は良い結果が出ているのに「本当は1億売りたいのに5000万じゃないか」と後出しじゃんけんの原理で成功が失敗になってしまったりするのです。こういうことがあると精神的にとてもへこむので、事前策としてこういうことを始めたわけです。で、結果後付けとしてこういう「モチベーションを引き出す効果」に気づいたのでした。

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