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街の身体感覚

こんにちは、ヒラクです。
ただいま僕、フランスにおりまして、2週間のバカンスを(たまに遠隔で仕事をしつつも)満喫してリラックスしております。で、ルーティンの仕事が無いのをいいことに、書き溜めていた記事をいくつか更新しようと思います。どうぞよろしく。
今はフランスにいますんで、せっかくだからそれに関係したお話から。
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ご存知の通り、僕はいわゆるグラフィックデザイナーという肩書きを超えて、「街をどうするか」という、いわゆる建築や都市計画のような分野に関わることが多くあります。そのなかで、僕としてはいつも「どういう街がいい感じなのか」ということを考えるのですが、一つ大事な要素として「その街が身体感覚に沿って設計されているか」ということがあります。
具体例をあげてみましょう。パリを一つの典型として、日本だったら京都や金沢があります。ベトナムだったら、ハノイが「身体感覚の沿った街」です。反対に、「身体感覚に沿っていない」と思うのが、同じベトナムでもホーチミン、中国の上海なんかもわかりやすくそうかもしれません。
で、その違いはなんぞや。まあ要は「大きさ」なんですよね。
僕が「良い街」だと思うところは「そこそこ」の大きさで、1,2時間散歩すると街の概要というか、スケール感がわかるようになっている。つまり、「歩く」という行為を単位に、街が組み立てられているということだと言えます。
徒歩圏に、商店や住宅や飲食店や気晴らしの場所、行政サービスを行う機関が適切に配置されている。そして、その徒歩の感覚にあわせて、街の景観が形成されている。
「歩く」という行為に沿ったアートディレクションが行われているところが気持ちいいと思うんですね。
これは都市計画の分野ではけっこう言及されていることで、特にアメリカを引き合いに出して語られることが多い(僕アメリカ大陸に行ったことないからわかんないけど)。アメリカの地方都市は、車があることを前提として発展してきたから、前述の商店とか住宅が何kmも離れて形成されていて、街の景観もそれにあわせて統一性のないものになってしまう、とかね。この指摘って、日本でも80%ぐらいの所にあてはまる気がするんですよ。東京や大阪・京都の一部を除くと車無しでは生活が難しいし、どの県にも、国道や高速のバイパス沿いに似たようなでっかいショッピングモールやらチェーン店の飲食街が並んでいて「またこの景色か」とうんざりすることが多い。
こういうのって、経済の問題や不動産事情が絡んでいるので一概に言えませんが、大きな発想の違いがある気がするんですね。歩いて買い物したり、誰かに会いにいったりする過程って、それ自体が「コンテンツ」になっています。歩いている途中で、誰々さんの家は、さいきんガーデニングに凝っているな、とか。それに対して、高速で移動するもので買い物や誰かに会いにいったりする過程って、「移動」になる思うんです(ドライブして楽しいという感覚もあるとは思いますが)。
A地点からB地点に行くという行為において、「移動」という概念を貫徹すると、限りなくその「移動」を効率化してAとBのあいだの時間をゼロにすることが目的になります。つまり、距離という空間的なものを、テクノロジーによって消滅させようとするわけです。よくリニアモーターカーとか、何かの特急電車が通って「池袋と○○がたった何分!」みたいな広告って、そんな発想だと思うんですね。
通勤で考えると、朝一分でも長く寝たいし、その気持ちは非常によくわかります。では、例えば「観光する」という切り口ではどうでしょうか。観光って、考えてみれば時間の効率化という概念をリセットして「空間的なものを楽しむ」という行為に徹する時間のことを言うのではないでしょうか。
パリや京都に旅行した人の話を聞くと「美術館も良かったけど、何より街歩きが楽しかった」なんて言いますよね。それって、歩くこと自体がコンテンツになっているという証拠です。街としてのトータルの雰囲気や景観の連なりを楽しんでいる。「空間的なもの」を、殺すのではなくもしろ活かそうとする発想です。
これが一旦車や高速鉄道が前提の計画になると、途端にそういうニュアンスが無くなってしまう。
僕が10代の頃からあちこちへ旅するようになったのは、考えてみればこの「空間的なもの」の充実と多様性に興味があったのかな、と思います。歴史の積み重ねで形成されてきたものを、歩きながら紐解いて行くようなことが好きだったんですね。
現在、まちづくりの計画に関わると十中八九出てくるキーワードが「観光」です。外の人を呼び込んで、産業を活性化させたり、内向きな傾向を変えよう、ということが必要とされるんです。
その時に僕が観光する側の立場として思うのが、今回のテーマである「身体感覚が刺激される景観であるかどうか」ということなんですね。宿で荷物をおろして一息ついて、散歩しながら素敵なものを見つけつつ、美味しいものを食べたりお芝居を見たり、美術館へ行ったり、バーで飲んでて思いがけない出会いがあったらどうだろう…。旅人の視点からすると、ニーズはとってもシンプルで、歩く・食べる・楽しむといった日常の基本行為の充実です。
そうだとしたら、まちをプロデュースする側はどこから手をつけるか。それは「○○のまち」みたいなスローガン作りよりもまず、一本の「通り」を作ること、なんて妄想したりするのです。素敵なカフェと宿屋と、古本屋さんときれいな鉢植えのある家が何件…みたいな何でもないのだけれど、旅人が電車にもタクシーにも乗らず、一日そこで楽しめるような、そんな通りです。
さて、そんな観点で見ると、今いるフランスの、パリとかリールってどうよって話なんですが。
お世辞抜きで、レベル高すぎだぜ!!それでは引き続きバカンスを楽しんできます!

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