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▶知られざる豆腐ようのルーツ。中国と沖縄を巡るミステリー ソトコト16年7月掲載

こないだ沖縄へ発酵文化のリサーチに行ってきました。目玉は沖縄独特の発酵食品「豆腐よう」の現場を見に行くこと。今回は、珍味好きに根強い人気を誇る豆腐ようの秘密に迫ります。

豆腐よう=豆腐の塩麹漬け

豆腐ようは、ドロドロに溶けたチーズ状の豆腐を爪楊枝などでチビチビ舐めながら泡盛のつまみにします。
味もまるでチーズのようで、酸っぱさ、甘さ、苦さ、そして独特の(というか臭い)香りが複雑に入り交じる、発酵界でも屈指のこじらせ食品と言えます。

ではどのように作るのかというと、超ざっくり言えば「豆腐の塩こうじ漬け」です。泡盛をブレンドした塩麹の漬け汁に、干して水気を抜いた豆腐を漬けて熟成(長い時は半年以上)させると、あら不思議、豆腐のタンパク質がドロドロに溶けてチーズのように。

麹菌を始めとする発酵菌の多数の酵素が豆腐を分解しまくった結果、もともとの原料には含まれていなかった糖類や旨味成分が濃縮され、香り高い泡盛の古酒(くーす)と合わせると「このまま海に沈むサンセットを眺めながら永遠(とわ)に発酵していたいけど、何も言えなくて…夏」と君の耳にそっと囁く夢を見たけれど、起きたら絶望的なふつか酔いだった…という話をよく聞きます(ホントかよ)。

実はピンクじゃない?琉球王朝に眠るルーツ

豆腐ようと聞いてイメージするのは、鮮やかなピンク色。これは、本土で使われている麹菌とは種類の違う、紅麹(べにこうじ)菌がつくり出す色。ところが、僕の行った豆腐ようの製造現場は、紅麹ではなく普通の麹に漬け込んでいた。この正真正銘の「豆腐の塩麹漬け」を製造している「琉球うりずん物産」にその理由を聞いてみたところ、「琉球王朝時代に口頭で伝えられていたレシピを調べてみると、本土と同じ麹でつくるものがメインだった。

現在メジャーになったピンクのものは、沖縄が本土復帰した後に物産品として発展したもの」とのこと。
口頭のレシピということで厳密には確証できないが、どうやら豆腐ようのルーツはピンクではなく味噌色であった可能性がある。

さてではピンク色の豆腐ようのルーツはいったい何なのであろうか。その答えは中国に古くから伝わる「腐乳」という豆腐をカビや細菌などで発酵させた加工品の文化。その中でもとりわけ台湾で重用される「紅腐乳(紅麹に着けた豆腐)」が、今日の豆腐ようのルーツとされる。

でね。気になるから行ってみたのだよ、台湾の紅麹工場に。そこで色々話を聞いてみたところ、驚きのエピソードが。

台湾の紅麹は、今から100年ほど前に日本からやってきた発酵学者と台湾のメーカーがチームを組んで紅麹菌の分離と純粋培養の方法論を確立したらしい(ちなみに日本に帰って農大の先生に聞いてみたら「そんな歴史は聞いたことない」との解答)。
近代的な発酵技術が開発されたことにより、紅麹は漢方食材として日常に普及しました(肥満や生活習慣病に効能があるとされている)。台湾に行くと、豆腐ようの他にも紅麹のお酒や、紅麹を練り込んだピンクのラーメンなど、目にも鮮やかな食文化を見ることができます。沖縄は古くから台湾と交流があったので、どこかのタイミングで紅麹の文化が共有されたのでしょう。

しかし発酵文化ってのは、掘れば掘るほど異文化間の交流が見えてきます。美味しいし、保存できるし、珍しいし、そりゃ価値のある貿易品になるよね。

【追記】色で麹の分類をすることもあります。お酒や味噌に使うのは黄麹菌、焼酎に使うのは白麹菌、豆腐ように使う紅麹など。赤い豆腐ようの鮮やかな色は、おみやげにはピッタリです。

 


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