BLOG, ▶発酵文化人類学, ▷文化と科学, ▷殿堂入り記事, ▷麹と調味料

甘酒はなぜ甘い?酵素がつくる甘味を解説してみた。

img_2192

「甘酒って、なんで甘いんですか?」

と「超そもそもな質問」をもらうことがたまにあるんだけど、確かによく考えてみると不思議ですよね。麹ブームで甘酒を飲むようになった人も多いと思うので、知っているようで実はよく知らない「甘酒のきほん」をまとめておきました。

甘酒には二種類ある

まず「甘酒」と呼ばれるものには大きく分けて2つあります。

▶酒粕甘酒
お正月に神社で振る舞われるのがこのタイプ。
お湯に酒粕と砂糖を入れてしばらく煮込んで作ります。
僕がハタチすぎるまで甘酒だと思っていたのはこれで、このブログを読んでいる人の多くも「甘酒といえばお正月のアレ!」ということなっているのではないかしら。

▶麹(こうじ)甘酒
最近になってよく飲まれるようになっているのがこのタイプ。水と麹を混ぜて、60℃前後で5〜8時間くらい保温すると「甘いスープ」ができます。
これにミキサーをかけて、麹の粒が砕けてポタージュ状になったものが、スーパーで見かける甘酒の正体。

この2つの違いは「砂糖を入れるかどうか」。
後者の麹(こうじ)甘酒は砂糖を入れません。

で、冒頭の「甘酒って、なんで甘いんですか?」
という質問を詳しく言い換えると、

「最近流行ってる麹(こうじ)甘酒って、なんで砂糖入れないのに甘いんですか?そのあたりに健康にいい秘訣とかあるんですか?」

ということになるんですね。

発酵菌の酵素が甘味を分解する

2種類ある甘酒のうち、ルーツは砂糖を使わない「麹甘酒」。
今のように砂糖が簡単に手に入らない何百年も前の時代に普及したものだからね。

甘いものが貴重だった当時において、米(←麹の原料)と水という身近な材料だけでスイートなサムシングがつくれるのはありがたいことだった。
ひとくち飲めば「甘い!うまい!」と盛り上がるし、風味以外にも様々な健康機能が備わっている優れものなのだよ。

さてでは「麹甘酒」の甘味の秘密を考えてみよう。
甘味の原料は、お米のなかに含まれるデンプン質。このデンプン質を麹菌という発酵菌がブドウ糖に変えてしまうのであるよ。ちなみに前提となる麹についてはこちらをご一読されたい。

・そもそも麹(こうじ)とは何か? 和食のエッセンス、ここにあり!

次。
では麹菌は具体的にはいったい何をやっているのか。
麹菌は、酵素を出してデンプン質をブドウ糖に変換する。

day2-055
麹菌の持つ2つの酵素。

この「変換」をさらに具体的に説明するとだな。
デンプン質という物質は、ビーズのネックレスのような構造をしている。そして麹菌の酵素は、そのネックレスのつなぎ目をハサミのようにチョキチョキ切って、ビーズ玉をバラバラにしてしまう。ネックレス=デンプン質であり、ビーズ玉=ブドウ糖なのであるよ。

甘酒の甘味のひみつ

「えっ。じゃあブドウ糖がいっぱい集まるとデンプン質になるわけ?」

その通り。

「じゃあなんでデンプン質(米)は甘くないの?」

良い質問だね。
人間の舌はね、複雑な物質よりも単純な物質のほうが味覚を感じやすいのさ。「お金持ちで優しくて話が面白いイケメン」よりも「ただただお前のことを愛しているだけのオトコ」のほうがグッとくるのだよ。

デンプン質という複雑な化合物が、発酵菌によって単純な物質へと分解されると、舌が「おっ、これ甘いぞ!」と感じるようになる、というのが甘酒の甘味の秘密。

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2014-12-04-12-30-14
発酵菌がチョキチョキ甘味を分解するイメージ。

砂糖を外から入れなくても、お米のデンプン質をチョキチョキするだけで糖分をつくることができる。つまり甘酒というのは「お米に潜んだ甘味を、発酵菌がぞんぶんに引き出したもの」と言える。少女漫画でよくある「ダサい地味娘の髪をアップにしてメガネ外して可愛い服着せたら化けた」みたいな状態をイメージしてほしい。

甘酒の優れた機能

「甘酒」「美容」とかのキーワードでググると色んな効果効能の情報が出てくるが、なぜ甘酒がこんなにも「カラダに良い」「お肌に良い」などと言われるのであろうか。

詳しいスペックは、他の専門サイトを参照してもらうとして。
甘酒の優れた機能のひみつは「人間の新陳代謝にエッセンシャルなものばっかりで構成されている」ということにある。

もっと解説しよう。
人間が「食べ物から栄養を吸収する」という現象を分解してみると、「お腹のなかで消化酵素を出して食べ物を細かく分解して吸収する」ということだ。

鋭い読者ならお気づきであろう。

「あれっ、それって発酵菌がやってることと一緒じゃないの?」

そのとおり。甘酒は、発酵菌によってお米の成分が細かく分解されまくっている。
だから「自分の身体が消化酵素を出さなくても、速攻で消化吸収できるように発酵菌がお膳立てしてくれている」ということ。「消化吸収という業務を、発酵菌にアウトソーシングしている」という便利すぎる事態が起こっている。

自分の身体を再生産するエッセンシャルな物質(ブドウ糖とか)が濃縮されているわけなので、とうぜん健康にもよくてお肌にもいい(肌がキレイってのは肌細胞の再生産がうまくいってることだからね)。

甘酒は、消化吸収能力がじゅうぶんに育っていない小さな子どもでも美味しく食べられる。病気で弱ってご飯を食べるちからがなくなった人でも無理なく食べられる。

まことに優れたレシピなのだよ、甘酒は。

Pocket