▶旅した&考えた

最近読んだ本リスト:2017年春

新著が出て以来、出版ツアーであちこち旅を続けている。
各地の友人たちに会ったり美味しいものを食べたり飲んだりする以外にも、移動中に本をたくさん読めるのも旅の楽しみの一つ。

本の執筆中には読めなかった知り合いの本や、専門書以外の本を片っ端から読みまくって久々に「楽しみとしての読書」を満喫しました。
備忘録代わりにツイッターでメモしておいた短い感想文をブログ記事にまとめておきます。
(僕の本のコメントよろしく!とかみんなに言いふらしているわけだし、まず僕からGiveしないとねえ)

最近読んだ本はこんな感じ

ということで最近読んだ本。だいたい知り合いの関わった本です。

▶バウルの歌を探しに:川内有緒
一言で言えば「才能によって書かれた本」。
ノンフィクションの旅行記のようなエッセイのような小説のような不思議な本。バングラディシュに巡礼の歌を聴きに行く、という内容なのだけど、読んでいるうちになにか異界に入っていくような感覚がある。これ何かに似ているな…と思ったら杉浦日向子さんの漫画だった!

よくある旅行記なのかな…と思って読み進めると修行者たちや詩人タゴールの奥深い歌が差し挟まれ、その歌に導かれるように旅がディープに深まっていく。

川内さんのような「絶対的に突出した感性」を目の当たりにすると、やっぱり才能ってあるよね!という気持ちになる。周りに「いい感性もってるひと」はいっぱいいるけど、ちょっと次元が違う感じあるわ。これが作家ってもんだねぇ。 めっちゃ面白いよ。

▶小商いで自由に暮らす:磯木 淳寛
千葉県いすみに住む友人、磯木さんの『小商いで自由に暮らす』も、タイトルからは予想していなかった読み応えのあるナイスな本。移住とか働き方系の本は、インタビューをまとめるだけのものが多いけど、ここにはちゃんと著者の仮説と確かな経験則がある。そして編集に構造がある。

インタビュー本にありがちの「素敵なライフスタイル拝見させていただきます☆」的な視点よちも「小商い的な経済はいかにして形成されるのか?」という問いをぶらさずに具体的なケーススタディとしてインタビューを集めているので「自分がこの本を読む理由」が明確になっている。写真や図版もいっぱいで編集も凝っている。これは読む価値あるで。

ちなみに僕が東京に住んでいた頃、磯木さんがいすみから上京する時の定宿は必ず我が家だった。夜遅くまで一緒に語り合ったことが、こんな素晴らしいかたちで結実するなんてほんとに嬉しいことだなあ。

▶日本のシビックエコノミー
友人の江口晋太朗くんが共著者として関わっている企画本。「課題解決」を命題とするソーシャルデザインからさらに一歩踏み込んで、市民による自治の方法論で持続可能な経済をつくる「シビックエコノミー」のケーススタディと考察がぎっしり詰まっている。これも磯木さんの本と同じく情報と編集が素晴らしい濃密で、各ページごとに発見がいっぱいある。都市計画とか政策提言の教科書として大学で使われると良さそうな本。僕もいっぱいヒントをもらいました。

▶不便益という発想:川上浩司
ミシマ社の星野さんから献本してもらいました。デザイナーにとってはめちゃくちゃ面白い本。便利さを重視しすぎてなんでもかんでも機能を詰め込むとユーザビリティがなくなるので「適度な不便さ」を設計するとコミュニケーションが滑らかになる、という主旨の本。
商品とかサービスの企画開発をするビジネスマンを対象に書かれた本だと思うんだけど、それ以外にも普遍的な気づきがある本。軽いボリュームなので中央線の特急に乗って山梨→東京に行く一時間ちょいでサクッと読めます。軽いけど薄くはない。

▶るろうにほん 熊本へ:佐藤健
仲良しの藤本智士さん編集の熊本の震災復興へのチャリティとして企画された本。俳優の佐藤健さんのファンブックを遥かに超えて熊本のルーツとそこに住む人達の暮らしぶりが伝わってくる。藤本さんはローカルのことをやりながらもマスのアイコンを扱う手つきが素晴らしいなとリスペクト。佐藤健さんの誠実なキャラも伝わってきて、おじさんが読んでも心が暖かくなりました。

▶移住女子:伊佐知美
友人の旅ガール、伊佐知美さんの『移住女子』。地方に移住した女性たちへのインタビュー本で、著者独特の文章のセンスが他の本と違いを生んでいる。知り合いが何人も登場するので、友達からの手紙のように微笑ましく読みました。
ただ、この本自体は企画先行でできた内容なので、伊佐さんの作家としての個性が全面に出た本が読みたいなとも思いました。次はもっと伊佐さんの潤いのある文才が見たいデス。

▶まちのゲストハウス考:真野 洋介&片岡 八重子
学芸出版の岩切さんから献本してもらみました。これも単なるゲストハウスのガイドブックではなく、まちづくりの文脈の延長線上にゲストハウスを置くことによって、宿というビジネスモデルにコミュニティや観光、若者の雇用問題など現代的なトピックスが重ね合わされていく重層的な編集。「ゲストハウスに行こう!」というだけの内容にならなかったぶん、本の奥行きは出たけど、編集の真意を汲み取れる人の母数が限られてしまいそう(まちづくり系の人以外にはややムズカしい)のが惜しい!

▶ぼくらは地方で幸せを見つける:指出一正
出版ツアーキックオフで対談したソトコト編集長の指出さんのナイスな本。編集者のキャリアのなかでの気付きと仮説の言語化、インタビューの人選、パンチライン多すぎな文体など、時代の空気が明確に切り取られた内容で、この世代のマイルストーンになりそう。
ソトコトのふんわりした雰囲気の裏にある確かな実感と方法論に納得。指出さんスゴい編集者だわ。

▶蚕〜絹糸を吐く虫と日本人:畑中章宏
こないだフジテレビの番組でご一緒した民俗学者の畑中章宏さんの素晴らしい民族誌。養蚕の文化を立体的に掘り下げていくことで、日本の中世〜近代の歴史が浮かび上がってくる。ワンテーマを切り取って普遍へと向かう才能と経験を兼ね備えた人にしかできない仕事が味わえます。いやこれスゴいわ。

▶日本人の身体:安田登
同じくフジテレビでご一緒した能楽師の安田登さんの絶対必読のクラシック。古代の言葉のルーツや能の謡曲を紐解きながら、日本人にとっての空間と時間の感覚を掘り下げまくってある。「身体=自分のからだ」という前提自体が近代以降の幻想であり、日本人にとって身体とは世界そのものであるというこに気づきます。
安田さんと出会ったことで「発酵と能の世界はめちゃ似ている」という恐ろしいことに気づいてしまいました。発酵好きの皆さまもぜひご一読あれ。
(そのうち安田さんと一緒に能×発酵の企画をやるかもしれません)

▶その日暮らしの人類学:小川さやかさん
大阪スタンダードブックストアで対談した文化人類学者、小川さやかさんの新書本。アフリカのストリート商人『マチンガ』の文化をフィールドとした驚きの世界観が明かされる、地獄のように面白い本です。僕この本読んで興奮しすぎて、しばらく脳みそがアフリカに行ってしまった。

ちなみに小川さんがマチンガの世界で発見した贈与理論は、僕の発酵文化人類学に書かれた世界観とかなり共通点があるそう。「普通の発酵本だと思って読んだら本格的な人類学の内容でビックリした。ヒラクさんはある意味人類学の最先端の流れに無意識に近接しているのかも」とコメントもらいました。超一流の文化人類学者にそんなこと言ってもらえるとすげー嬉しいデス。

 

他にもいっぱい読んでいるので、また時間がある時にブログでまとめることにしよう。
最近色んな人から献本があるのですが、全部読んでいるよ。

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