『発酵文化人類学』の出版記念企画として、雑誌ソトコトの連載バックナンバーを無料公開!  なぜそんなことをするかというと、書籍版は過去の連載記事を全部無視した「完全書きおろしREMIX」だからなのだ!

▶三角形の幸せなコミュニケーション。発酵界には「読モ」が必要だ! ソトコト17年6月掲載

僕、微生物の研究に入る前は全国の地場産業に関わるデザイナーだったので、今でもたまに醸造業界から商品開発やブランドづくりの相談を持ちかけられることがあります。よくあるパターンのお悩みとしては「なかなか一般の人に知ってもらえなくて…」「広告やPRをどうしたらいいかわからない」のような「関係性のつくりかた」があるようです。

今回は僕なりに考える「幸せな関係のつくりかた」をお伝えしたいと思います。押忍!

不信感を生む関係性

発酵食品をつくるメーカー(作り手)と、それを味わうユーザー(受け手)。この信頼関係がマーケットおよび文化を形作る。なんだけど、しばしば両者は信頼ではなく疑いの線でつながってしまう。典型的なやり方でいえば、作り手は商品を広告して「ウチはこんなに素晴らしいものをつくっています」とアピールする。ところが受け手は「そうやってメーカーは不当にモノを高く売りつけようとする」と不信感を持つ。その反応を見た作り手は「消費者は文化の質を知らない」とガッカリしてしまう。

この悪循環を繰り返すうちに「あれ?この業界なんか行き詰まってない?」という状況が生まれることになる。

「わかる!ウチもそうです!」と心当たりのある読者の方も多いのではないかしら?

直線関係から三角関係へ

悪循環を脱出するには、作り手↔受け手の直線関係の上にもう一つ点を置いて、「幸せな三角関係」をつくることが大事だとヒラクは思うのですね。この三角関係の象徴を、僕は「読モ(読者モデル)」と呼んでいます。ほら、ファッション誌とかに出てくる「読者と業界のあいだにいるひと」のことね。この読モが文化が盛り上がる時のキーになるのだな。

日本酒を例にとってみよう。作り手の酒蔵と、たまに日本酒を飲む受け手がいる。そしてこのあいだに、お酒の嗜(たしな)みかたをよく知っていて、作り手の背景も知っていれば飲み手の素朴なギモンにも応えられる読モ的存在を置いてみる。すると滞っていたコミュニケーションが循環し始める。酒蔵は読モを唸らせるお酒を頑張ってつくり、読モはそのお酒をいちばん美味しく飲む方法を発明し、飲み手に「このお酒は、こんな人がつくっていて、こんな飲み方したら美味しいよ!」と楽しく伝える。すると飲み手は「日本酒ってこんなに美味しいんだ!ワタシももっと嗜み上手になりたい!」と開眼する。読モを通して作り手は自分のお酒の新たな可能性を知り、飲み手は作り手へのリスペクトを深める。

するとほら!みんなが幸せなコミュニケーションの循環が始まるではないか。

読モ=小売店&飲食店!

発酵業界における読モは、料理研究家やソムリエだけではなくて。重要なのは小売店と飲食店なのですぜ。日本酒でいえば、酒屋さんと居酒屋さん。ここが各地の蔵を訪ねて理解を深め、自分の店オリジナルのラインナップと飲みかたを提案し、お客さんと一緒に遊びまくると、停滞していた業界が盛り上がりはじめる。

実はだな。2017年現在、発酵業界における作り手の質はかつてないほど高まっている。一生懸命ものづくりに取り組む作り手に「もっと伝え方を考えないと」なんて言わせてはいけない!醸造家レボリューションの後は、読モレボリューション。ナイスなコミュニケーションをつくるポイントは「みんな幸せになる遊びかた」の発明なのですね。

人口5000人にも満たない岡山県西粟倉村で酒屋「日本酒うらら」を営む道前理緒さん(イラスト右)と深夜まで盃を酌み交わしながら語った席で、今回の「読モ理論」が生まれました。道前さんの実践こそ発酵文化の未来の種なのです。


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