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ポエムの構造分析〜html上に出現した歌広場〜

コラムニストの小田嶋隆さんが指摘したように、「ポエム」と呼ばれる文体が確実に世に普及している。

それは たとえば

改行が 多く広く

句読点のない 感傷的な

文体のこと なんだけど

最近 よく見るのは

なんでなのかな…

「マンションの不動産広告」や「アイドルグラビアページのキャプション」をその起源とする(らしい)ポエムの世界は、WEBテキストの構造とよくマッチしたのだと僕は思うのよね。

ポエムの構造を分解してみると

では分解して見てみるぜ。まず「改行」の問題ね。
「改行して雰囲気出したいのはわかるが、行間が広すぎじゃあねえか」と疑問に思っていたのだが、これはもしかすると、wordで文章を書くときのように、そのまま改行キーを押してしまっているのかもしれない。ブログの文法はhtmlなので(←WEB業界の人には当たり前すぎる話ですが)、ブログの種類によっては改行キーをそのまま押すと、「段落改行」になってしまう(普通の段落内改行をしたい場合は、SHIFTを押しながら改行キーを押す)。

つまり、本来「センテンス(ひとかたまりの文)」であるものが、「パラグラフ(文節・段落)」に格上げされている状態なのだな。これって、要はhtmlルールを無視した状態で文章が入力されている現象なんだけど、実は哲学的な命題をはらんでいるのかもしれない(大げさだな)。
文章を構造として捉えると、まず単語をつないでいって一文をつくり、それを句読点で区切る。これが「センテンス」という単位。こいつを連続していって、あるトピックにあわせてまとめていくと、「パラグラフ」という単位になります。で、パラグラフ全体の意味を要約するような見出しや、冒頭の一文(トピックセンテンス)を置いていくと、「ああ、体系的に書かれた文章だな」とわかる、いわゆる「記事」になります。

しかし!ポエムの世界では、全ての文が「パラグラフ」であり、「センテンス」はありません。要約も分解もそこにはなく、全ての言葉がエモーショナルに宇宙と一体化しているぜアセンション!そして技術的に言えば、段落が切り離されているので、一行ごとに文字を太くしたり大きくしたり色を変えたり中央揃えにしたりも自由自在。結果、改行オニ盛り、デコりまくりのパンチのあるビジュアルに進化するのは当然ともいえる。

ではパラグラフを変えて「句読点」の問題へ。
ポエムには句読点が全然無い or ほとんど無い、という特徴があります。これもまた不思議な現象だな…と思っていたら、答えは語義にありました。「センテンス」は日本語では『文。句点によって分けられた一つづきの言葉』という意味ですが、上記の通りポエムには「センテンス」が存在しないので、従って句読点も存在しない、という理屈になります。つまり、「学校で習ったんだろ?句読点ぐらい打てやぁ!」と詰め寄るのは間違いである、というか文章の構造について無知であるという己の不勉強をさらすことになってしまいます。
ポエムにはセンテンスがありません。全てが見出しなのです(htmlの文法的には)。全てはワタシのエモーションの120%発露であり、そこに「優先順位」や「強弱」、「主文・副文」という関係性が入り込む余地がない。新聞や雑誌の記事とは本質的に違うものなのだッ!

あわせて民ちゃんの意見も参考にしたい。「句読点を打ちだすと、前後の文章とのつながりや誰が何を言っているのかの関係性を考えなきゃいけないから、アタマを使うし面倒」とのことで、これも的確な指摘だと思う。SNSやブログを頻繁に更新したいなら、なるべく負担をかけずにサクッといきたい。その時に「句読点を省く」という選択肢は妥当なのかもしれない。

SNS上に出現した歌広場

最後に「感傷的」という問題を見ていこう。
ここまで書いたらほとんど結論は出ていたぞ。ポエムは「文章」でなく「うた」なのだ。ポエマーはSNSやブログ上で「書いている」のではない。「うたっている」のですよ。記事名が「曲名」、本文はぜんぶ「歌詞」。そう考えると、主語があいまいだったり、前後関係のつながりが意味不明だったりしても良いのだな。大事なのは、エモーションなのです。

「でもよ、文面からはエモーション伝わってこないじゃんよ」

なるほど。しかし君はまだポエムの仕組みをわかっていない。文字としてのポエムの大半は「自分の顔を知っているコミュニティ」に向けてうたわれている。ポエムを受け取る側は、そのうたい手の性格や最近の近況やテンションを知っている。だから、文字を見ただけで「うたが聴こえる」のだね。

こころが折れることだって あるよね

というパラグラフを読んで、「やっぱり顔はイケメンだけどお金にルーズなヒロシくんとはダメでした」という「センテンス」を想像する。

やっぱりさいごにたどりつく答えは 親友

というパラグラフを読んで、「今夜あたり、アンタに電話するから起きてろよ」という「センテンス」を想像する。
かように高度な「インタラクティブコミュニケーション」なのだよ、ポエムは。

おおお、そう考えると今WEB空間は急速に「カラオケボックス化」しているのかもしれない。

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