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クラフトビールを巡る、つくり手と飲み手の幸せな関係

『発酵文化人類学』の出版記念企画として、雑誌ソトコトの連載バックナンバーを無料公開!  なぜそんなことをするかというと、書籍版は過去の連載記事を全部無視した「完全書きおろしREMIX」だからなのだ!

▶クラフトビールを巡る、つくり手と飲み手の幸せな関係ソトコト17年4月掲載

ビールの話の続き。ここ数年、スーパーの棚にクラフトビールが並ぶようになりました。大手メーカーの「いわゆるビール」ではない個性派ビールの台頭には、いったいどんな背景があるのでしょうか?今回は「つくり手と飲み手の関係性」を掘り下げまーす。

クラフトビール=個性派ビール

まずクラフトビールの定義。ローカルのビール屋さんが、職人的な技法や、メジャーなビールではできない原料や酵母を使うことによってクラフト(工芸)的な個性を持つビールができあがる。大手メーカーの主要銘柄は、喉越しの良いドイツルーツの「ラガービール」だが、クラフトビールはベルギーやイギリス、チェコやアメリカなどの様々な文化を反映したビールがある。

なかでも最も「ふだんのビールと全然違う!」と実感できるのが、ラガービールと違うタイプの菌(酵母)を使った「エールビール」だ。ラガービールよりも高温で発酵させ、醸造家のセンスや醸す環境の特性が色濃く反映される「味わうビール」なのだね。炭酸味やキレがラガービールより少ないぶん、口に含んだ後の味や香りの奥行き、心地よい余韻を残す苦味や旨味など、好みにはまればめちゃ心地よい陶酔感を味わうことができる。

こういう複雑な風味のクラフトビールが受容されるということは、つまりビールの楽しみかたが「とりあえず」から「じっくり味わう」に変わってきたと言えるのですぞ。

クラフトビール人気の背景

実はバブル期、観光目的の「ご当地クラフトビール」をつくるのが流行ったことがあった。自治体が大金を投じて「オラが町のビール」を開発したのだが、大半が10年ももたずに淘汰された。高価で見知らぬ味のビールを買う人が全然いなかったんだね。これ以降しばらく「日本人は結局大手のラガービールしか受け付けない」という定説が流布することになった。

しかし2000年代以降のクラフトビールムーブメントは違った。お酒好きが熱狂的に支持し、グラス一杯1,000円のビールをガンガンオーダーする。かつてのブームと一体何が違うのだろうか。ヒラクの私見では「飲み手のセンスの向上」がポイントだ。

つくり手と飲み手の幸せな関係

僕は日本各地で様々な年代の人たちと発酵食品の仕込みやテイスティングのワークショップをする。そのなかで、世代が下になればなるほど「味覚のセンス」が鋭くなってくるんだよね。

特にアートやデザインが好きなオシャレ女子の味覚はかなりのレベルで、先入観に囚われずに美味しさを判断できる。しかも、クラフトビールの複雑な味や香りをちゃんと要素分解して、自分の言葉で印象を語ることができる。反対に、上の世代は「情報」や「慣れ」によって好みの味の幅を限定していて、雑誌や本に書いてある味わい方を自分なりに追体験している、という人が多い。

クラフトビール専門のバーに行くと、オシャレな若者でいっぱい。彼らはビールを最先端のアートを楽しむような感じでビールを飲んでいる。

いくら良いものをつくっても、その良さを理解してくれる人がいないと文化は生まれない。革新的なプロダクトが根付くためには、先入観に囚われない柔軟なセンスが飲み手が大事なのだね。

「つくる」だけがアートじゃない。「楽しむこと」もまた文化をかたちづくる創造的な行為なのであるよ。

【追記】メジャーなビールとクラフトビールの典型的な違いはこんな感じ。他にもクラフトビールには様々なタイプがあり、自分なりの好みを見つけるにもハマる要因になるのだ。

 


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