▶デザインを掘り下げる

「一周まわってベタ」の価値が、ついにパリにも

先月久々にパリを再訪したんですけど、実は一つ目的があったんです。それは、「merci」を見に行くこと。雑誌でたくさん取り上げられているのでご存知のかた多いと思います。

このお店、いまパリで「もっともイケているホットスポット」の代名詞になっているそうで、朝の開店時間のちょっと前についたら、すでにお店の前には何人も開店待ちのお客さんがいました。

ちょっとお店の説明をすると、レプビュリックを少し下った3区のはしっこにある、ブックカフェとブティックとインテリア・雑貨店が合体したコンプレックス。店の雰囲気は「ザ・スノッブ!」ではなく、大きな住宅がざっくりとイノベーションされている印象です。無垢のフローリングに、手塗りっぽい白い壁、メインフロアは大きな吹き抜けになっていて、印象としては「フレンドリー」かつ「オーガニック」。今どきっぽいのですよ。

取り扱っているものは、けっこう高級品が多い、のですが、なかにはお手頃価格のシャツとか雑貨があったりして、宝探し感があります。で、このお店の特色としてはまず第一にその「merci(ありがとう)」という店名。ここにコンセプトがあるんです。

ここで取り扱っているものを買うと、その収益がマダガスカルをはじめとする「途上国や、社会的に問題のある国の子供たちに利益が還元される」仕組みになっています(オーナーはBonpointという子供服ブランドもやっている)。で、そのコンセプトに賛同する色々なブランドが、「merci特別価格」で商品を卸していたりする。

そう、一言でいえば「ベタすぎるほどの慈善事業が、お洒落にパッケージングされている」のです。

こんなコンセプトのお店が、スノッブの権化であるパリの中心地にオープンし、あまつさえ大人気とは…!!!とやはり衝撃を受けたわけなのでした(みんながみんなスノッブなわけじゃないけどさ)。

merciが登場する前のパリのホット・スポットと言えばご存知「colette」です。ルーブル近くのサントノレ通りにある高級ブティック。ここは隅から隅から一部の隙もなく「これが最先端だ!これがラグジュアリーだ!!」という威圧感を出しまくり、そこで商品を買ったお客さんに「coletteさんにあやかりたいですぅ?」と思わせてしまう。典型的””bobo”なお店なわけです。それが、隙ありまくり、ユルくてオーガニックでフレンドリーな「merci」の前に屈するとは。ん?、時代は変わったぜ。

ちょうど++を立ち上げる頃から感じていたことなのですが、「何かを買う」という行為の意味合いがじわじわと変わりつつあるんですね。それこそパルコの時代から連綿と続いた「他人と差別化するためにモノを買う」というスキームが解体しつつあり、かわりに「他者とつながりを感じるためにモノを買う」という傾向が強くなってきた(この話は、最近三浦展さんが出版した「第三の消費」周辺の本を読むとわかりやすいかも)。

「デタッチメント=他人なんて関係ないね、オレはオレだぜ」から「コミットメント=他人とどういう関係性があるかが自分のアイデンティティなのよ」という風に変わって来た。

これは文化人類学的にいえば「贈与経済」の要素が「貨幣経済の支配するマーケット」に静かに侵入してきた、ということです。

merciで買いものをすると、自分がなにかを買うことで「見知らぬ人のmerci(ありがとう)を感じる」という仕組みは、「なんで知らない子供に私のお金がいっちゃうのよ。そのぶん安くしなさい」という価値観とはまったく別の次元での説得力がある。ついにここヨーロッパ精神の核であるパリに、「いいからありがとうって言ってみようぜ。ほら、なんか嬉しくなっちゃうよね」という「一周まわってベタ」な価値観がオーサライズされたという意味で、僕は「merci」の出現はエポックメイキングな出来事だと思うのです。

「ごたくはいいから写真を見せなされ」
はい、おっしゃるとおり。

 

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