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「だからお前はダメだ」の再生産ビジネス

こんばんは、ヒラクです。
週末は宮城の鳴子温泉郷へ法事。のんびりしてきました。

今年は二十歳超えてから、最も「親族行事」に参加しています。ちょっと前だったら「めんどくさいなあ」と思っていたところですが、最近はけっこう「良いもんだ」と思うようになりました。

だって「親族」って、普通だったらぜったいに仲良くならない人と「特別な絆」になっちゃうわけじゃないですか(皆様ご存知のとおり、僕はけっこうな「シスコン」なんだけど、その姉ちゃんも、僕が仲良くなる女性のタイプとほど遠い)。これを「わけわからん」とネガティブに捉えていたもんが、「あ、これって結構おもしろいな」と思えるようになったのは、人間観がまろやかになって「良い加減」になっている兆候なのでしょうか。

さて、今日の本題です。

帰りの電車で、最新号の「courrier japon」を読んでいたのですが、ちょっと(というかだいぶ)気になることがありました。

courrier Japonは、当初フランスの雑誌courrierの日本ライセンスとして出された「海外から見た日本」を読み解く主旨の雑誌。世界各国の政治/経済/文化観がチャンポンになった「良い加減」の情報ザッピングをするのに格好でした。それが。編集長が代わってからだんだんと「リバタリアン」的な論調に拍車がかかって来て、正直今年になってからは読み終わって、「ちょっとどうかな」と思ってしまうんですよね(記事一つ一つをとると、面白いんだけど)。
今号のテーマは「世界から仕事が消えていく」。

ロボット技術の進化によるオートフォーメーションとか、学習機会の格差が原因で「使える労働者」と「使えない労働者」の二極化が起きているとか、そういう記事を集めた特集なのですが、全編読んだ後に伝わってくるメッセージが、端的にいえば「もう世界はこんなことになっちゃってるよ?お前そんなぬくぬくしてていいわけ?」であり、「だから日本人はダメなんだよ。グローバルスタンダード目指して努力しろ」なわけです。こういうのって、読者はどう受け取るんでしょ?「そうだ、英語やんなきゃ!」といってロゼッタストーンの広告のページをめくるのか、「オレはもう勝ち組だ。せいぜい皆努力したまえよ」といって優越感にひたるのか。ちなみにヒラクは「えっ、その言い草あんまりじゃない?イラッ」でした。
ではこの「イラッ」を分解して考えていく事にしましょう。

まず一番わかりやすいのは「TOEIC900点以下(というか受けたことない)、グローバルビジネスと無縁(というかその逆)の自分にダメ出しされた」というごくごくまっとうな「イラッ」です。これはもう解説は不要ですね。

そして、よーく点検するともう少し入り組んだ理屈があります。それは、「お前遅れてっぞ」というメンタリティこそがその「遅れ」を再生産している、という逆説です。

だって考えてみてください。「お前は遅れている。だから追いつけ」と言われて必死に走るじゃないですか。で、目的の地点にたどり着いたら「追いつくべき相手はもっと先に行っている」という「ゼノンのパラドックス」みたいな状態になる。そもそも気づいたら遅れているぐらいなんだから、相手はめちゃ速いわけです(ハーヴァード大出てMBAの資格取って英語ネイティブでIT最先端&金融スキルバッチリ)。だから、「追いつけ!」といっても99.9%の人は追いつけず、途中でリタイアですよ。つまり、中途半端な英語スキルで中途半端なビジネススキルで、中途半端なイノベーターです。「そのなかから0.1%でも天才が出ればおこぼれがその他に回ってくるからいいのだ」という理論を良しとすれば、それはもう典型的な「リバタリアン」で、「(めちゃ速い産業を除いた全ての)アメリカ経済を没落させた」理論です。それを良いか悪いかというのを論じるのはイデオロギーの問題になってしまうので、ヒラクからは「そもそもそれって本当に合理的なの?」という視点で考えていきますね。

もし僕が「ビジョナリーなリーダー(この言い方がすでにアレですが)」であれば、多分こう考える。「超絶がんばって0.1%の天才がそこにたどり着くかもしれんが、たどり着かないかもしれん」ところに賭け金をベットするするよりも「そこまで遅れているのであれば、そもそも同じ道を辿らずに上手くやる方法」を考えた方が「より多くが生き延びる」のではなかろうか?と考える。

さらに言えば、「どうしたら、超速い最先端の連中を、別の尺度でうらやましがらせることができるか」という作戦を立てたほうがクレバーではないかと思うわけです。

ちなみに、courrier Japonと併読していたのが「岩手のうるし」の本だったので、僕は上記の仮説に基づいて、「手工芸に憧れる若者を、『うるしインキュベーション』したらどうか」と考えました。「日本のうるし文化」。他の土地には発達していない「独自のテクノロジー」であり上質のうるしを見たら一発で「美しい?」と惚れ惚れする(たぶん、この感覚は他の国の人にも通じる)。つまり、他のヤツが真似できず、かつイケてる産業です。「進むも遅れるもない」領域です。こいつを「時代遅れのもの」ではなく「比較不可能なアドバンテージ」としてのリソースと見なす。つまり「戦わずして利を得る」方法論を取る。

「バカ言うな、世の中そんな甘くない」という声が経産省のお役人あたりから聴こえそうですが、フランスやイタリアやスペインはこういう「軽工業のブランド化」と「観光産業」が経済を下支えしています。つまり、「同じ尺度で真似できない領域に資源を突っ込む」という省エネ作戦を得意としています(そんな商売してるからEUはボロボロなんだという突っ込みもありそうですが、それはちょっと違う次元の問題があるのです)。あ、でも「クール・ジャパン」は経済産業省だったな。

話を戻しましょう。「負けないためには戦わない」。「土俵に乗る前に土俵をつくる」みたいな作戦が結構大事なんじゃないかなと思うんです。ジャイアンとのび太がケンカするとしたら、丸腰ではのび太は100%負ける。だからドラえもんの力を利用するわけです。それって、僕は「まっとうな戦略」だと思うんですよね。グローバルスタンダードというマッチョなヤツがきたら、「歴史」という飛び道具を使う。で、勝負のルールを無効化するようにしかける。

生物学の世界でいうと、どんなかたちであろうと「長く生き延びたヤツ」が偉い。だから、僕は1%の天才を出すためにみんな討ち死にするよか、「頑張らなくて住む場所へ移住する」みたいな選択肢のほうがいいと思う。だって、年収1億かせいでシャンパンタワーしなくても、みんなで鍋つついて与太話してればけっこう幸せですもん。そして(なんかねじれた言い方ですけど)今必要なのは「みんなヘラヘラ笑って鍋つつく」ためのしたたかな作戦なのですよ。それを企むために、まず自分たちの意識化にある「抑圧を生み出すバイアス」を意識上に顕在化させる。

「グローバルスタンダードの強者」の「お得意様」って誰かというと、「グローバルスタンダードの弱者」です。だから、「お前、遅れているから追いつけよな」というヤツは「ボク、遅れてるからがんばって追いつくよ」というヤツに有利な条件で商売する。例えば、雑誌のライセンス契約で極東のアジアの国からお金を巻き上げるとか。

なので「私たちは追いつかなければいけないのです!」という人は、戦う前からすでに負けている。相手に「先行しているアドバンテージ」の時間軸が見えていない。「ルールに従うヤツ」は「ルールをつくったヤツ」に勝てない。なぞなぞの出題者と回答者の関係性と同じです。

超乱暴な意見だけど、「うるしの歴史というアドバンテージ」と「グローバリズムの歴史というアドバンテージ」を同じ視点で見たらいいんじゃないかと思います。アメリカが日本を差し置いて「うるし大国」になるのは難しい。中国がブラジルを差し置いて「サッカー大国」になるのは難しい。だから日本がア

メリカを差し置いて「グローバル・スタンダード」になるのは難しい。それがヒラクの見解です。
いや、ここまで書いてわかりました。スッキリ。

しかしCourrier Japonはあれですね。こんなに「だからお前はダメなんだ」と言っておいて、たぶん「ダメじゃないお前」は望んでないんでしょうね。そうなったらたぶん読者の皆様は英語で「エコノミスト」読むから、おまんま食い上げだもん。

「だからお前はダメなんだ」は「お願いですからあなたはずっとダメでいてね。」と同意なのだ!

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